少年は、カープと吉田拓郎を好きなまま大人になりました。
しかし、ラジオの深夜放送は、いつのまにか聞くことが、なくなっていたのです。
広告会社に就職した大人になった元少年は、吉田拓郎のことも
忘れかけていました。
と言うより、吉田拓郎が好きだと言うことが、ダサイと思うように
なっていたのです。
本当に生意気でした。
何故だか恥ずかしかったのです。
ある時、嘉門達夫に「もしかしたら、拓郎さん、好きと違いますか!?」
と聞かれたことがありました。
「何で!?」
と聞き返すと、
「何となく、ね」
と言われ、
「そうかー」
と言う元少年の言葉で、その会話は終わったのですが、数年たって二人とも
好きだったことを白状して、腹を抱えて笑ったものでした。
元少年はそれ以来、吉田拓郎を好きだと、堂々と言うようになりました。
東京に出た頃、広島弁を使うのが恥ずかしくて、ぎこちない標準語を
使っていたのが、歳を重ねるうちに広島弁を臆面もなく使えるようになった、
そんな気持ちとよく似ていたのかもしれません。
だからと言って、吉田拓郎のライブには決して行くことはありませんでした。
何故行かなかったのかは、今でも謎のままです。
そうこうしている内に、ひょんなことから元少年は、吉田拓郎に
会うことになるのです。
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